「英語の本を英語で読めるようになりたい!」そんな情熱だけを頼りに、ひたすら洋書を読み続けてきました。いわゆる英語教材を使った「勉強」は、英語のやり直しを始めた頃にこそ取り組みましたが、ほどほどのところで切り上げ、あとは気のおもむくままに、英語のレベルなど考えずに読みたい本を読んできただけ。ごくたまに、かつて使っていた文法書や単語集を見返したりすることはありますが…。
そんなハリボテの英語力で洋書を読み続けていると、たまに脳がショートして、英文がまったく頭に入ってこなくなることがあります。また、どれだけ本を読んでも、どうしても覚えられない単語や知らないイディオムがこれでもかというぐらい出てきて、自分の語学センスのなさ、記憶力の悪さに深く落ち込んでしまうことも。
そんな時には本を読むのを一旦やめて、映画や海外ドラマを観てリフレッシュします。英語熱を再び高めるために私がこれまでに何度も見返してきたのが、キャメロン・ディアス、トニ・コレット主演の映画『イン・ハー・シューズ』です。
性格も生き方もまったく違う姉妹が、互いに対して抱いていたコンプレックスを克服し、自分らしい生き方を見いだすまでを描いた物語です。
読む喜びを思い出させてくれる映画。
キャメロン・ディアスが演じる妹のマギーにはdyslexia(難読症/学習障害)があり、読み書きが満足にできません。そのため定職に就くことができずに荒れた日々を送っていました。ところがある出来事がきっかけで、マギーは詩を読む喜びに目覚めます。
その瞬間のマギーの弾けるような笑顔は本当に可愛くて、そのシーンを見返すたびに、自分の肩の力がすうっと抜けていく気がするのです。
あせらなくていいんだ。上手く読めなくても、早く読めなくても、その内容をじっくりと味わい、ただ楽しめばいいんだ…って。
そう思うと、洋書を読むときの心のハードルがグッと低くなります。
マギーはこの出来事を境に自信を取り戻し、未知なる可能性の扉を開くことになります。さらにマギーだけでなく、姉のローズ(トニ・コレット)や祖母のエラ(シャーリー・マクレーン)もそれぞれに悩みや孤独を抱えていましたが、やがて転機が訪れ、これまでとは違う人生を歩み始めるのです。
この3人の女性のドラマを追ううちに「人生、いつでもやり直せる」と思えてきて、勇気が湧いてきます。劇場公開当時はマギーに共感を覚えていた私も、今では祖母エラの気持ちが理解できるようになり…。歳月の流れと諸行無常の響きを感じさせられますね………。
原作小説も読んでみた。
何度も見返すほどのお気に入りの映画。せっかくなので原作小説も読んでみました。
個人的な好みを言えば、面白さは映画の方が原作を上回っているかなと思います。
例えば、マギーが詩を読む喜びを知るきっかけとなる場面ですが、原作と映画では設定がまったく異なります。小説の方は、かなり突飛で非現実的。私は映画版の方が断然好きです。しかし原作では、私のようなbook loverが現実ではできないようなことをマギーが代わりにやってくれたりして、映画とはまた違った爽快感を味わうことができます。
小説の方は、何度も読み返すようなことはそんなにないかな…と個人的には思っていますが、心に刺さる会話文が小説版にあったので、ここにメモしておきますね。マギーの姉ローズが、ソリの合わない自分の継母について、年配のご婦人(レフコウィッツさん)に愚痴っている場面です。
“A lemon,”
(あなたの継母は)レモンね。
“Hah?”
どういうこと?
“Think about fruit. When you squeeze an orange, what do you get? You get orange juice. You don’t get grapefruit juice, you don’t get apple juice, you don’t get milk. You get orange juice. Every time.”
果物について考えてごらんなさい。オレンジを搾るとオレンジジュースができるでしょう? グレープフルーツジュースはできないし、りんごジュースにもならない。オレンジを搾ってもミルクは出てこない。オレンジからできるのは、いつだってオレンジジュースなの。
“People like that. They can only give you what you have inside. So if this Sydelle (Rose & Maggie’s stepmother) character is giving you so much trouble, it’s because she’s nothing but trouble on the inside.”
人間も同じことよ。人と接するとき、表に出てくるのは内側から湧き出てくるものだけ。そのシデルって女があなたを苦しめてばかりいるなら、それはほかでもなく彼女自身が苦しんでいるからよ。
レモンは「嫌なもの」「人に苦痛を与えるもの」の意味。
私も、酸っぱいレモン汁ではなく、いつでもオレンジジュースを作れる人間になりたいものです。
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