出木杉くんは、現実の世界に実在した!
2020年のアメリカ大統領選に向け民主党からの出馬を表明した、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ氏の回顧録「Shortest Way Home」を読み終えました。
表紙の腕まくりポーズ、力が抜けててとっても自然体!
この人のことは、ジミー・ファロンの「The Tonight Show」で知りまして↓
さらに、渡辺由佳里さんによるこちらのコラムを読んで、すっかり彼のファンになってしまいました。
人として完璧すぎて困っちゃう。
このブティジェッジ氏、知れば知るほど、人として完璧なんです。ドラえもんの出木杉くんよりさらに出来過ぎ。
ドラえもんを観たことのある人なら、その大半が出木杉くんではなくのび太くんを応援してしまうはず。非の打ち所のない人間は、往々にしてわれわれ凡人の目にはイヤミに映ったりするものです。しかし、ブティジェッジ氏にはそれがない。むしろ、神様がこの世に遣わした天使なのではないかと本気で思ってしまうぐらい、全てが清々しいのです。
あらゆる政治家を貶しまくるアメリカの深夜トークショーの司会者も、この人に関しては批判する要素がなくて困っている様子。「The Daily Show」の司会者でコメディアンのトレバー・ノアさんも、仕方なく、いつも通りにドナルド・トランプ現大統領をオチに使うしかないようです。
トレバー・ノア(2分27秒あたりから)
「ブティテジェッジ氏は7カ国語に堪能です。『ノルウェー語の本が読みたいから』ってだけでノルウェー語をマスターしてしまうような人なんですよ。それに引き換え現大統領ときたら…。本はまったく読まないし、まともに話せる言語もゼロ!」
トレバー・ノア(1分40秒あたりから)
「あなたはオックスフォード奨学生で、元軍人で、ゲイで、信心深い。語学にも堪能で、保守的な中西部の出身で、行政の経験まで積んでいる…。あのー、何か大きなスキャンダルになりそうなネタはないんですか? 地下室に死体を隠しているとか…」
ブティジェッジ
「死体はないですw」
トレバー・ノア
「死体もないか…」
私も、ノアさんと同じ感想しかありません…。
毒舌が売りのコメディアンとしてはツッコミどころがないと商売にならないでしょうから、視聴率を維持するためにはトランプ続投の方が都合がいいかも知れませんね!?
リベラルでありながら全方位に気を配る。
それはさておきこのブティジェッジ氏、先ほど「天使のよう」だと書きましたが、理想郷を追い求めて綺麗事を並べ立てるような、ふんわりした思想の持ち主ではありません。回顧録から見えてくる彼の素顔は、現実を冷静に見極め、ミレニアル・さとり世代らしい割り切りと潔さをもって計画を実行に移す、地に足のついた人物なのです。
イデオロギーに縛られず、ノスタルジーにも浸りすぎず、良いアイデアがあれば、超党派での実現を模索します。ガチの保守主義者であるマイク・ペンス現副大統領に対してさえも何とか共通項を見出だし、地域経済の復興のために協力し合う道を探ろうとするのです。ブティジェッジ氏の人気の秘密は、この潔さとしなやかさにあるのではないでしょうか。
右と左の両端から罵り合う人々を眺めて日々うんざりしている私のような者にとって、ブティジェッジ氏は砂漠のなかのオアシスのような存在。地道にコツコツ暮らしを営む中間層の気持ちをわかってくれる人がようやく現れた…と言う思いです。
一流のストーリーテラー。
それからこのブティジェッジ氏、ハーバード大学では歴史と文学を専攻していただけあり、ストーリーを語るのがとても上手いのです。回顧録では、選挙の遊説中にローカルフード攻めに遭った、とか、従軍中に理不尽な理由で上司に怒られた…というような小話が生き生きと語られ、アメリカの外に住む私のような者にも、この国を取り巻く現状がリアルに伝わってきます。大統領の任期を終えたら(←気が早すぎ)、ぜひとも作家になってほしい。
何といってもこの回顧録のクライマックスは、夫のChastenさんとの愛の物語ですよ!
恋をしたい人、今恋をしている人、愛する人にプロポーズをしようとしている人、愛に少々疲れている人…そんな方々は、第6章の16節「Becoming One Person」と17節「Becoming Whole」だけでも今すぐ読んでほしいです。今までさまざまな本を読んできましたが、これほどまでに人の心にまっすぐ響く美しいラブストーリーを、私は他に知りません。
そんなわけで…ブティジェッジ氏にはぜひとも大統領になっていただき、私の所有するハードカバーにプレミアがつく日を首を長ーーくして待っています!
トレバー・ノアさんの自伝もオススメ。死ぬまでに読んでおきたい名作です。
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