40代後半ぐらいから、人生にむなしさを感じながら過ごしています。更年期による気力低下のせいなのか、女性としても人間としても、自分の存在意義を見出すことができなくなって。
世間の中年女性への風当たりって、あまりにも冷たくないですか?
歳をとって精神的にはだいぶ図太くなってきたとはいえ、まだまだ小さなことで日々傷ついているんですよ。
たとえば…。
流行りのファッションがことごとく似合わない
何を着ていいのかさっぱりわからないから、私なんてもう何年も前から基本的に冬以外は毎日Tシャツ(秋はロンT)+デニムですよ。そうしたら今度は「カジュアルおばさん」などと嘲笑されたりする。
職場での立ち位置が微妙
仕事でがんばれば「お局さま」と言われ、がんばらなければ「おばさんは使えない」と言われる。面倒そうなことは全部押しつけられ、手柄は男性社員に横取りされる。
若くないけど、年寄りでもない
推し活なんかをしてると「イタい人」扱いされる。これが87歳のおばあちゃんなら「可愛い」とか「生きがいがあるってステキ」なんて言って褒めてもらえるのに。
…こんなつまらないことで落ち込む自分にますます幻滅し、さらに心が削られていくのです。
振り返れば、子供のころから「女のくせに」攻撃にさらされ、大人になってからも数々のセクハラパワハラに耐えてきました。がんばって努力してそれなりに経験を積み、さまざまな理不尽に打ち勝つための術を身につけてもなお、今ひとつ人間扱いされている実感が持てずにくすぶり続ける毎日。
ミッドライフ・クライシスに蝕まれ、しぼむ一方の気持ちをグイッと引き上げてくれたのが、この本でした。
あらすじ
名だたる大富豪が別荘を構えるニューヨーク州の超高級避暑地で、身元不明の少女の遺体が見つかった。事件の真相を突き止めるべく、地域の住民である3人の中年女性が動き出す。徐々に明らかになっていくセレブコミュニティーの闇。そして死者はどうやら1人ではない様子。男性社会の犠牲となった少女たちの無念を晴らすべく、中年女性たちによる壮絶な復讐劇が幕をあける…。
スーパーヒーローの要素がつなぎ止める共感
少女たちの運命を弄んだ男たちに鉄槌を下すべく立ち上がった3人の中年女性は、それぞれ「特殊な能力」を持っていました。
Harrietは、さまざまな植物や鳥や昆虫の習性を熟知し自由に操ることができます。Nessaには死者の声を聞きその姿を感じる能力が、そしてJoには、内側に溜め込んだ激しい怒りを力に変える能力が備わっていました。これらの能力は、職場の男性に成功を邪魔されたり夫に裏切られたり、または夫を亡くしたり、あるいはライフステージの変化に苦しんだりする中で、自然に研ぎ澄まされてきたものでした。
この荒唐無稽なスーパーヒーローの要素が、暗く堅苦しくなりがちなフェミニズムの物語に共感と説得力をもたらしてくれています。フェミニズムの話というのは時として、女性にとっても耳の痛い、受け入れがたいものなのです。事を丸く収めようとして男性のやることに目をつぶり、きちんと声をあげてこなかった…そんな後悔の念を持つ女性にとっては特に。
あの日あの時、もっと毅然とした態度で男性たちにNoと言える力を持っていたら。そんな思いを幾度となく抱いてきた私にとって、中年女性たちの復讐劇はじつに気持ちのいいものでした。
歳を重ねたからこそ、できることがある
更年期の真っ只中にいると、明るい未来を思い描くことができず、こんな感じであと30年も40年も生きなければならないのか…と絶望的な気持ちになったりします。しかしこの本を読んで、自分の目先をちょっと変えることができました。
人に誇れるような立派なことは成し遂げていないにせよ、これまで良いことも悪いことも、恥も後悔もひととおり経験してきました。自分の中に積み重ねてきたものを、これからの世代のために活かしていきたい。自分が受けた理不尽を、次の世代の女性たちが味わわなくてすむように。
というわけで、明日からもまた堂々と、ロックTシャツを着て出かけます。カジュアルおばさんを気に入らない人が憤死しても知らないよ!
この本についてひとつ難を言えば…はじめと終わりの100ページは息をつかせぬ面白さなのですが、それ以外が少々間延び気味。女性の問題ぜんぶ載せで、読む方は途中で息切れしてしまいました。トピックをしぼってコンパクトにまとめてくれたらなお良かった。
あまりにも胸糞悪くてあえて目を向けないようにしてきたこの二人↓についても、この本を読んだことでようやくきちんと知ることができました。とはいえ、これらのドキュメンタリーはこの先も辛くて見ることはできなそうです…。物事を知るための一歩として、フィクションはやはり最適ですね。
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